Wednesday, February 04, 2009

ワリと読んでる隔週の漫画誌があって、そのなかで最近始まったものがある。
作者は、有名な・・どちらかというと、ちょっとオーバーなストーリーを得意とする、男っぽい話を書く人だ。
そんなに嫌いではない。
その最近始まったストーリーには、山の中で生きるというか、社会からドロップアウトした人間が、まるでマタギの人みたいに生きようとすることが描かれている。
都会・・人間のというか、今のこのクニの社会からドロップアウトして生きるというのは、何にしてもキツイ。
何でもかんでも、金さえあれば手に入れられる世の中というか、このクニ。
これは、金が無ければ、このクニでは生きていけないことをも意味してしまう。
しかし、そんな金という価値の「ようなもの」というのは、不況になってしまえば途端に力を弱め、それまで肩を風切ってイキガッテいた連中でさえ、ただの人にしまう。
また更に弱い輩は、簡単にハジカレてしまう。

そんな弱い男が、一人山に入り、言うならば生き方を模索するとでもいうのか?

ある意味、このストーリーの行方に興味がある。


もう30年も前のことだ。
10代後半から、その頃の友人と山に幾度か行った。

丹沢方面が、主だった。

ある時は、沢登り。
またある時は、神ノ川だったか?の上流の方の河原でテントを張って野営したり。
テントを張るとすぐに日が陰ってくる。
早くメシの仕度をアタフタとしながら、次第に夜は深けていく。
辺りには、当然の事ながら電灯など無い。
焚き火を囲み、酒を飲み、アアダコウダと自分達の将来の事をあてども無く喋り続けた。
リーダー各の奴は、幼少時から絵が上手く、将来はアニメ作家になると言い、
人が馬鹿みたいにいい奴は、役者になると言い。
俺は、ミュージシャンになると話していた。

俺達は、言っていた通りにそれぞれの道を歩き出した。

今は、彼等はどうしているのだろうか?
元気にやっているのだろうか?

人がいい役者志望の男は、ある劇団に所属して、そこで主役を張ったりもしたが、生活がまま成らぬ為に劇団を辞め就職し、そして随分経った頃に電話があった。

大阪に単身赴任だと言っていた。

それも10年以上前のことかもしれない。
その後、連絡の取りようが無くなってしまった。

リーダー格の奴は、早くからCGの世界に入っていったはずだ。
自分でアトリエというか、自分の事務所を開いて何とかやっているはずなのだが。

彼等は、どうしているのだろう?

その彼等と南アルプスの前方の山に入った事がある。

静岡駅から阿部川を上流に向かってバスに乗り、古い温泉湯治場で下車して、それから山に入っていった。
多分、二泊三日程の行程だっただろうか?
雨の中の登山であった。宿泊もモチロン雨の中でテントを張り簡単な食事をして・・と、そんな軽い縦走だったのだろう。
ただ、俺にとっては、軽い縦走といっても、とても「重い」ものだった。
体力・持久力が劣っていたために、登山道にはかなり苦労した。

そして、その山を縦走する行程の中で、観光地とは程遠い景色を垣間見た。

大崩落、という場所だった。

かつては富士よりも高い山だったというその山が、火山活動による大噴火で山頂からほとんど吹っ飛んだ、その大きなウネリの証のような場所だった。

それは、人間など足元にも及ばない圧倒的な岩石量の聳え立つ切り立った岩壁だった。

恐ろしかった。

それが大自然というものだろう。

なんともちっぽけな自分がそこにいた。

それを思い知らされたような気がした。

山から下山すると、妙にまた山に行きたくなった。
人間社会?の煩わしさが際立って感じたような気がした。
それも日が経つに連れ慣れて鈍化していった。
また繰り返す日常があった。

20代は、自分の足元が脆弱で、とにかくイラついていた。
実力も当然皆無だった。
自分をどう高めたらいいのか、方法さえ解らなかった。
闇雲に上手くなりたいとだけ思い、練習するだけの日々だった。
唯の思い込みに等しい「情熱」?というより狂気じみた想いだけが、
自分のよりどころだった。

それは単に自分が甘かっただけだったのだが、
刺激の無い学生生活は退屈なだけだった。
それはそうだ。自分と望む方向が全く違う世界であったからだ。
当初は、周りとの温度差に愕然とし呆れていたが、
やがて自分から行動を起こさないとダメだと気が付いた。

早く自分の望む違う世界に飛び込んで行き、
そこで刺激を受けなければ、
自分はどうにもならずにただ散っていく、とだけ感じていた。
しかし行動といっても、地道な・地味な一つ一つの積み上げしか出来なかった。
自分なりに自分を磨くしか術は無かった。
焦りながらも時を待った。
そうするしかなかった。
切迫した気持ちだったと思う。

凄い奴に会いたかった。
そう思い続けた。
何故か。
多分、自分を信じていなかったからだ。
疑っていたのだ。
自信などというものは皆無だった。不安だったのだ。
ギターがある程度上手くて多少チヤホヤもされたが、
そんなことはレベルが低すぎて、気持ち悪くてしょうがなかった。
「こんなはずではない。俺のこの程度では、あの世界では通用するはずが無い。
まだ圧倒的な者に出会っていない。」
もしそれに出会って自分の存在をも吹き飛ばされてしまうことであってもそれでよかった。
吹き飛ばされたかった。
そこで、初めて自分が試されると感じていた。
それでも自分が踏ん張れるかどうか?
俺には何か有るのか無いのか?

生き残れるかどうか?


そして出会ってしまったのが、古澤良治郎さんであり近藤等則さんだった。

自分にとって不足は無いどころでない強烈激烈な男達だった。

それからが、修行の本番突入となったのだ。

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